一年で従業員の約半数が入れ替わる、とも言われるほど離職率の高い美容業界で、スタッフの定着率が驚くほど高い会社。それが、大阪・京都・奈良に６店舗の美容院を展開している株式会社ミネである。社長の前田浩司氏は、美容業界には珍しく、派手なところが何もない。ブランド物も一切身に着けないという。「僕はピラミッドで言うと一番下で、みんなを支える立場ですから。家族よりもスタッフ優先。晩ごはんだって、親元から遠く離れて働いている子もいるのに、自分だけぬくぬくと家で食べるなんてできないですよ」
前田社長が重視するのは、中途採用よりも新卒採用。以前は慢性的に人手不足で、とにかく誰でも採用した。結果、統率が取れず、サボりや手抜きが横行、辞めるスタッフも多かった。「これはもう、中途採用の寄せ集めではあかん、と思いましたね。そこで全国の美容学校などへ求人に回ったんです。そうして一から育てているというのも定着率に繋がっているのかもしれません」。
地元の子供向けイベントから海外進出まで、事業計画に余念がないが、それらも全て従業員のため。「彼らにはいろんなことを経験して、成長に繋げて欲しいから。儲けなんて無い無い(笑)」。最近の趣味は、スタッフの結婚式でスピーチをすること。「まず頼まれることがうれしいですよね」と笑う。そこには常にスタッフのことを想い、人生に寄り添う“第二のお父さん”の顔があった。